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「いのち教育としてのスクールカウンセリング

―お坊さんでスクールカウンセラーの活動を通して―」

 

坂井 祐円(仁愛大学)

 

 

【講義概要】

 

 教育の原点は「いのちといのちの響き合い」にある、と言った教育学者がいました。一人ひとりの人間の成長を「大いなるいのち」の表れとして見る姿勢です。教科としての道徳の学習指導要領の指針内容の細目には、「人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めること」という文言が見られます。こうした理念を実現できる場の一つとして、「いのち教育」を挙げることができると思います。ただし、これは単に教室で行われる授業のことのみを指すのではありません。むしろ私は、スクールカウンセリングの営みにおいてこそ、「いのち教育」が実現すると考えています。ここでいう教育というのは、何かを教えるという意味ではもちろんありません。いのちを通して「共に育まれる」という意味です。とりわけ生きる意味や死に関わる問題と接するとき、このことを強く感じます。私はお寺で仏事をつとめる一方で、スクールカウンセラーをしていました。このときの活動を『お坊さんでスクールカウンセラー』という一冊の本にまとめる機会がありましたが、今回はこの営みを「いのち教育」の視点から改めて問い直してみることによって、学校臨床における心理支援の根底にある「いのち」の問題に迫ってみたいと思います。