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児童福祉領域におけるスーパービジョンの課題

 

今堀 美樹(大阪体育大学)

福田やとみ(支援者支援阪神心理研究室ぽむるーむ)

 

 今堀先生から「児童福祉領域におけるスーパービジョンの課題」というテーマで発題(20分)を行い、福田先生の発題(20分)の後、今堀先生と福田先生が相互に質疑応答(20分)を行います。

 

 

【講義概要】

 

今堀 美樹

 社会福祉施設の中でも,保育所は施設の数が他に抜きんでて多いのですが、働いている保育士の中には“保育所が社会福祉施設である”という認識を持っていない方もおられるように思います。しかし、保育所は紛れもなく社会福祉施設であり、保育士の実践においては社会福祉の専門技術であるソーシャルワークが用いられなければなりません。

 ソーシャルワークとは、社会福祉領域で生まれ発展してきた専門技術です。ソーシャルワークが世界で初めて生まれたのはイギリスですが、それが専門技術として発展したのはアメリカです。アメリカでは、ソーシャルワーク理論の発展過程において、心理療法理論と深い影響を相互に与えあってきました。カール・ロジャーズがカウンセリング理論を生み出したのが、児童相談所でソーシャルワーカーたちと共に働いていたことがきっかけだったという歴史的事実が、その一つの証拠です。

 今回、保育所におけるソーシャルワークに着目し、具体的な課題に対し保育士はソーシャルワーク理論を活用することが求められていること、また、それがどのようにすれば実現できるのか、ということをお示しします。その上で、保育士が実践の中で解決困難な子どもの問題と出会い、保育士としての自分の限界を感じたり、一人の人間としての成長を求められたりした場合に、スーパービジョンがいかに重要であるかについて考えます。

 

  

福田 やとみ

 被虐待児童の施設入所後などに、支援者によって虐待的処遇がおきるリスクがなぜ生じやすいのか?田中万里子心理学博士(米国の州社会福祉局で児童保護の主任を経験)から教えていただいたことをお話ししましょう。またそれゆえに、支援者自身の課題を自覚し、発達の過程で必然的におきるいわば“気づかぬプチ・トラウマ”に気づいて乗り越えるための自己ケア・自己成長のためのこころのワーク、ならびにスーパービジョンと、その機会を作る試みについてご紹介したいと思います。

 

 

 (補足説明)

 平成の初め、日本にはないと言われていた児童虐待について、大阪府では保健福祉連係が必要と考え、全国にさきがけて、児童虐待防止地域ネットワーク構築のモデル事業を立ち上げました。(筆者の勤務していた児童相談所では、心理職の筆者がコーディネーターをさせていただきました。)その後、虐待件数は鰻登りで、この試みはその後全国に広がり、四半世紀を経た現在は、要保護児童対策協議会として、全国の自治体に法的に必置義務があるまでになりました。

 わが国では、早期発見に力を入れましたが、回復を目指す治療的介入はなかなか進みません。親のメンタルヘルスへの支援の必要性を感じ、私は大人の相談機関に異動させていただきました。大人のメンタルへルスも、家族や地域の課題も複合的です。

 さて、米国では平成の初めの時点で、職員の燃え尽き退職も増加していました。日本でも同様となり、慢性的人手不足であり、関係職員の心身の負担は過重で、心身の健康を守る方策が喫緊の課題になっています。